空前なラグビーブームを日本にもたらせているラグビーワールドカップ2019。
東京や横浜などの大都市だけでなく、元々ラグビーの街として知られている岩手・釜石や埼玉・熊谷、東大阪・花園など全国各地で行われており、地方でもラグビー熱が高まっているのもラグビーフィーバーとなっている理由となっているでしょう。
しかしラグビーワールドカップは、世界的に見ると、オリンピック・サッカーワールドカップと並んで世界3大スポーツのひとつ。
これほどの国際大会でさまざまな国から訪日することを考えると、釜石のスタジアムは収容人数約16,000人・熊谷は約25,000人、元々ラグビー好きの人にとってみれば聖地的な場所で納得ですが、最近ラグビーを観始めた人からするともっと大きなスタジアムでやらないのかなという疑問が出てきた人も多いはずです。
具体的には約60,000人強入る埼玉スタジアムや、約40,000人のパナソニックスタジアム吹田などは収容人数の多さだけでなく交通の便としても便利なはず!
しかしラグビーの会場にはなっていないのです。
それは何故なのでしょうか?
ラグビーワールドカップ会場一覧
今回のラグビーワールドカップ2019の会場は、北から札幌ドーム(北海道・札幌)、釜石鵜住居復興スタジアム(岩手・釜石)、熊谷ラグビー場(埼玉・熊谷)、東京スタジアム(東京・調布)、横浜国際総合競技場(神奈川・横浜)、エコパスタジアム(静岡・袋井)、豊田スタジアム(愛知・名古屋)、花園ラグビー場(大阪・東大阪)、神戸市御崎公園球技場(兵庫・神戸)、東平尾公園博多の森球技場(福岡・博多)、熊本県民総合運動公園陸上競技場(熊本)、大分スポーツ公園総合競技場(大分)の日本全国10会場となっています。
前述どおり日本全国で開催されており、また会場だけでなく例えば福岡では近隣の北九州が練習会場になっているなど地域を挙げて盛り上がりに貢献しています。
ただ収容人数だけを考えると「約25,000人の熊谷より約60,000人の埼玉スタジアムの方が埼玉で行うなら良いのでは?」と思うのは自然な考えかもしれません。
苦難続きのラグビー会場選考
ラグビーワールドカップは会場選考の段階から苦悩続きでした。
まず最大の苦悩は、なんといっても新国立競技場が使えなかったことでしょう。
実は新国立競技場の建設が決まった理由はラグビーワールドカップ日本招致のためだったのです。
その時はまだ2020東京オリンピックは決まっていない段階でした。
しかし東京オリンピックが決まったのち、新国立競技場はデザインの問題や予算の問題などが噴出し、完成予定が1年ずれたためラグビーワールドカップでは使用できなかったのです。
いつの間にか東京オリンピックのシンボル的存在に新国立競技場はなっていき、ラグビーワールドカップのために建設が始まったなんて誰も覚えていないような状態になってしまいました。
本来なら決勝戦や少なくとも日本代表戦1試合は新国立競技場で間違いなく開催されたでしょうし、元々このために作られたといってもよいスタジアムなので関係者はさぞかし憤慨したに違いありません。
また当初は会場候補だった、比較的キャパの大きな埼玉スタジアムやパナソニックスタジアム吹田(吹田スタジアム)は公式発表はないものの断られたと言われています。
つまり、選ばれなかったのではなく断ったというのが正しいのです。
さぞかしラグビーワールドカップの会場決めをする関係者では苦悩続きで、今のラグビーフィーバーを考えると感慨深いものがあるのではないでしょうか。
埼玉や吹田が選ばれなかった2つの大きな理由
なぜ、埼玉や吹田はラグビーワールドカップの開催を断ったのでしょうか。
他にも素人的考えでいえば、ラグビーとサッカーは同じフットボール発祥で同じような芝のピッチを使うスポーツ。
日本には2002ワールドカップサッカーを開催した実績があり、上記のスタジアム以外にも宮城スタジアムやカシマスタジアムなど大きな収容人数が可能な大スタジアムは他にもあります。
金銭的なことだけでいえばどちらもサッカーだけの使用では赤字、試合日は周辺の飲食店なども潤うはずですし街の知名度を世界的に上げるという意味でも、国際的イベントはやりたいと思うのが普通。
しかし断りを入れたのには大きな理由があるのです。
それは、サッカー専用スタジアムであること。
サッカー専用だからラグビーはやらせない!なんともこれだけ聞くとサッカーは器が小さいように思えてしまいますが、そうではありません。
サッカー専用スタジアムの場合、ゴールの後ろにはそこまで大きな幅がありません。
そのため座席からピッチまでが近いため、より臨場感のある試合観戦ができるのですが幅がないためラグビーでは使いにくいのです。
ラグビーの場合、試合を観ていれば分かりますがトライの際、ある程度の幅がゴールラインからないと非常に危険。そのスペースをサッカー専用スタジアムでは作れないのです。
旧国立競技場でもラグビーの試合の前日にはピッチを囲うように人工芝が置かれていましたが、他の会場でも横浜や東京スタジアムには陸上競技場の兼ねているため、トラックがありその部分にラグビー仕様とするため人工芝を置いているのでしょう。
また豊田や博多のスタジアムなどは、もともとラグビーとサッカー兼用スタジアムとして建設されているのでピッチも幅も広く作られているのです。
今後のラグビー発展のためにも専用スタジアムの充実を
今回のワールドカップラグビーでもサッカーと兼用スタジアムでは、芝が完全天然芝でそこで植え付けさせているのではなく、ブロック型で植え込んでいることもあり激しいラグビーではめくれてしまい批判も出ています。
欧米でのラグビースタジアムの基本はハイブリッド型芝。これならばある程度激しくこすれてもはがれることが少ないのです。
20年後には再びラグビーワールドカップを日本で開催したいなんて言っている人もいますが、今後のラグビー人気を上げていくには国内リーグトップリーグの真のプロ化と、熊谷や釜石、秩父宮のようなラグビー専用スタジアムの拡張・充実が欲しいところです。
まとめ
今回は「埼玉スタジアムやパナソニックスタジアム吹田などでは何故ラグビーの試合がないの?」についてお届けしました。
ラグビーもサッカー並みの文化にまで根付いていくことができれば、ラグビー専用スタジアムも日本中にできるかもしれません。
そうなれば、日本が世界の強豪国になる日も夢ではないでしょう。