2019年9月20日からラグビーワールドカップが開催されました。
日本代表がグループリーグで4連勝し、初めての一次リーグ突破を決めたこともあり今までにない程ラグビーへの注目が集まっています。
私も友人とテレビで試合を観戦していますが「ラグビーはよくルールが分からない」「たくさんの人がボールに集まって固まりになっているけど何でそんなことするの?」そんな疑問をよく聞きます。
確かにラグビーのルールは一部分かりにくいところもありますし相手をスピードで抜き去る、華麗なパスを繋いでトライを決める、そんなプレーの方が見ていて分かりやすいですし華やかに見えると思います。
今回普段はあまり注目されにくいフォワードの選手達が試合中にどのような動きをしているのか解説したいと思います。
ラグビーのポジション
画像出典:ホンダラグビー部
まずラグビーにはどんなポジションがあるのか、ここで紹介したいと思います。
テレビ等でも特集が組まれているのでよく耳にする機会が増えていますが、そもそもラグビーは15人で行うスポーツです。
ポジションは背番号で区別されていて1番~8番が今回取り上げるフォワードというポジション。
9番~15番の選手がバックスというポジションです。
フォワード、バックスそれぞれに更に細かいポジションがありますが、今回は大きくフォワードとバックスで分類したいと思います。
よくフォワードの選手が守りでバックスの選手が攻撃と勘違いされる方がいますが、ラグビーの場合フォワードの選手も攻撃と守備をしますし、バックスの選手も攻撃と守備をします。
ただポジションに寄ってボールに触れる回数が異なるので、たくさんボールを触る回数が多いバックスの選手の方がトライを取る確率が高くなりますし、実際にトライを取る回数が高いんです。
ではフォワードの選手の大きな役割が何かというとスクラム、ラインアウトからバックスに球を出してチャンスを作る、密集からボールを出してバックスのチャンスを作ることです。
スクラムやラインアウトのセットプレーから球を出すこと、密集から球を出すことが何故そんなに大事なのか、それをこれから具体的に説明していきます。
スクラムにおけるフォワードの役割
試合中プレーが途切れた際に、プレーを再開する方法としてスクラムがあります。
8人の選手が固まりとなりお互いに押し合いますが、試合中非常に重要なプレーとなります。
なぜ重要かというとスクラムからスムーズにボールが出ないとバックスは自分達の意図した通りのプレーが出来ないからです。
例えばキックを使って相手の陣地奥深くまで攻め込もうとか、足の早い1番外の選手までボールを回してトライを狙いにいこう等作戦を立てているので、スクラムで押されてしまってボールがスムーズに出ないと予定していた通りのプレーが出来なかったり最悪の場合相手にボールを取られて攻守が切り替わってしまうかもしれません。
試合の展開に寄っては勝敗を大きく左右してしまうこともあるのです。
ではそのスクラムはただ8人のプレイヤーが組み合って押しているのかというと、決してそんなことはありません。
スクラムの最前線で相手と直接体を接触させる1~3番の選手は実はミリ単位の繊細な動きをしています。
例えば相手と組む際の首の角度が少しズレてしまっただけで上手く押せないことがありますし、足の位置が少しズレただけで相手に押し負けてしまいます。当然1~3番以外の4~8番の選手も細かい足の位置や肩の位置に気を配って押しているのです。
同様にボールがグランドの外に出た際に行われるラインアウトもバックスにボールを出せるかどうかで試合の行方を左右してしまいます。
モールにおけるフォワードの役割
試合中にモールといってボールを抱えたままお互いに押し合うプレーがあります。
このモールに関してもフォワードが強いことで有利になります。
ラグビーはボールを前に投げることが出来ないので、前身するためにはキックを蹴るか走ってボールを運ぶしかありません。
しかし、ボールを回すとノックオンする可能性やタックルを受けた相手にボールを取られる可能性があります。
ノックオンとは
手や腕などの上半身(首から上を除く)にボールが当たってから前方へ落とすこと。
反則とされ相手ボールのスクラムになる。
モールを組んで押すことが出来れば相手に奪われる可能性も低く尚且つ最も最短のコースでボールを運ぶことが出来るのです。
今回のワールドカップで敵陣に攻め込んだチームがラインアウトからモールを組んでトライを取るシーンが何度も見られました。
フォワードが強ければ確実に、安全に得点を取ることが出来ます。
ラックにおけるフォワードの役割
ボールを運んだ選手がタックルを受けて倒れた後に選手が集まってきて密集になる場面がよく見られます。
いわゆるラックという状況ですが、そこでもフォワードによるボールの争奪戦が繰り広げられています。
ラグビーのルールの中で「タックルを受けて地面に倒れた選手は、ボールを離さなければならない」というルールがあります。
守備の選手は相手がボールを離しているので、ボールを獲得して自分達の攻撃にしようと試みますが、元々攻撃をしていた側の選手達は相手にボールを取られたくないので、自分達のボールを守ろうとブロックします。
これもルール上の話になりますが、攻撃側の選手が自分達のボール守ろうとブロックするとラックが形成されたと判断され「ラックが形成されるも守備側の選手は手でボールを取りにいってはいけない」という反則があります。
ではどうすれば守備側がボールを獲得することが出来るかというと、スクラムの様に相手を押し込むことでボールを獲得することが出来るのです。
今説明した『タックルされた選手はボールを離さなければならない』『ラックが形成されるとボールを手で取りにいってはいけない』この2つのルールから数人の選手が集まってボールの取り合いをすることになり、ラグビーを知らない人からすると固まりが出来てごちゃごちゃしてよく分からないという状態が出来るのです。
このラックでもフォワードの役割は大きいです。
せっかくバックスの選手が相手を抜き去ってチャンスになったとしても、その後のラックでボールを取られてしまえばいつまでもトライを取ることは出来ません。
逆にフォワードが強ければ相手のボールを獲得してチャンスを作ることも出来ますし、弱いフォワードのチームはラックにたくさんの人数をかけないとボールを出すことが出来ないのでいつまでも数的優位を作ることが出来ず、ボールをバックスに出してもトライを取ることは出来ません。
つまりフォワードが強ければその後のボール運びで数的優位を作り出しトライを取る数も自ずと増えます。
まとめ
これまでラグビーにおけるフォワードの役割やその重要性について説明してきました。
もちろんトライをたくさん取るバックスの選手も身体能力はとても高く、たくさんトライを取るためには多くの努力が必要です。
ただラグビーはフォワードの局面、局面での働きによって試合展開は大きく左右してしまいます。
テレビで見るとトライを取る選手に注目が集まりがちですが、フォワードに注目することでまた違ったラグビーの見方が出来るのではないでしょうか。