現在、世界の主要なリーグでは次々にVARが導入されています。
日本においては昨年のロシアワールドカップや今年のアジアカップで一躍有名になりました。
Jリーグでも一部の試合では試験的に導入されていますが、今のところはまだ本格導入には至っていません。
果たして、今後日本でVARが主要リーグのように本格導入されることはあるのでしょうか?
VARは時代の流れ?
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は今や世界の主要なリーグでは当たり前のものとなりつつあります。
VARが初めて試合で使われたのは2016年の8月です。
その後、VARは世界各国のリーグで続々と採用されれていきました。
欧州5大リーグでは、セリエAとブンデスリーガが2017-2018シーズンから採用し、2018-2019シーズンからはリーガ・エスパニョーラとリーグ・アンでも採用されています。
また、今シーズン(2019-2020シーズン)からはプレミアリーグでも導入が始まりました。
さらに、VARはこうしたリーグ戦にとどまらず、UEFAの統括する大会でも導入が始まっています。
CLの決勝トーナメントにおいても既に導入済みです。
また、冒頭で述べたようにFIFAやAFAが主催している大会でも順次導入されています。
つまり、VARの導入は最早時代の流れとなりつつあるのです。
そもそもVARとは何か?
VARという言葉は、サッカーファンの間では今ではすっかり定着していますが、決して一般的な認知度は高くありません。
ですので、ここで改めてVARについて説明しておきたいと思います。
VARはビデオ・アシスタント・レフェリーの略称で、日本語に訳すと「ビデオ担当副審」となります。
サッカーでは従来から主審と副審が試合をコントロールしていたわけですが、VARはこれに次ぐ新たな審判ということになります。
VARの役割は、特定のプレーに関して反則があった場合に、無線を使って主審へレビュー(映像確認)を勧めるというものです。
または、主審の側が「重大なプレーが発生した」と判断した場合に、主審自らがレビューを行って判定を下すというパターンもあります。
しかしいずれにせよ、VARの目的はあくまでも正確なジャッジを増やすことです。
さて、そこで気になるのがVARが適用されるプレーについてですが、これには具体的に以下の4つに関わるプレーが該当することになっています。
・得点
・PK
・レッド-カード
・間違った選手への警告または退場の宣告
VARを導入することで、以上のようなプレーに対して極めて正確なジャッジを行うことができます。
また、VARの導入にはジャッジの正確化以外にもいくつかの副次的効果もあります。
例えば、シミュレーションやファウル、審判に対する抗議・暴言の減少です。
このことは、VARを導入した多くのリーグで統計的に明らかになっています。
つまり、VARは正確なジャッジだけでなく、クリーンでフェアなプレーをもたらすことができるシステムなのです。
Jリーグでも導入の方針
さて、世界の主要なリーグでは既に導入済みのVARですが、実は我が国のJリーグにおいても遅ればせながらVAR導入に向けて舵が切られています。
ただ、いきなり本格導入が行われるというわけではなく、一部の試合における試験的な導入を経てからのことになります。
JリーグにおけるVARの試験的導入が発表されたのは、今年の1月24日です。
JリーグはVAR導入に至った経緯について以下のようにコメントしています。
「Jリーグは、国際サッカー評議会(IFAB)が定める手続きに則り、VAR導入に向けた取組みを2018シーズンを通して行ってまいりました。この度、VAR導入に向け、審判員の教育が順調に進んでいること、および、VAR介入の対象となる事象が起こる可能性がより高いトップレベルの試合に導入を行うことで、VARの効果をより正確に検証の上で 今後の導入の方向性を議論するための材料とするため、導入を決定いたしました。」
ちなみに、今回の試験的導入の対象となるのはJ1リーグ数試合とルヴァンカップ・プライムステージ全13試合、J1参入プレーオフ決定戦の1試合です。
今シーズンになって、これだけの試合で試験的導入が行われるということは、今後本格導入に向けた動きが加速すると見て間違いないでしょう。
本格導入のハードルとなるもの
VAR導入に向けてJリーグですが、これが本格的なものになるためにはどうしても越えなければならないハードルがあります。
それが、人員の確保です。
VARを導入すらためには、通常の審判に加えてVAR専門のレフェリーを確保しなければなりません。
具体的には、1試合で最低でも4人のレフェリーを新たに動員しなければなりません。
VAR、AVAR(アシスタントVAR)、RO(リプレイオペレーター)、RA(レビューアシスタント)がこれに当たります。
ただ、この内ライセンスが必要になるのはVARとAVARのポジションのみで、RO及びRAに関しては対象外となっています。
従って、ライセンスを保有した人員に限って言うと、1試合で必要になるVAR専門のレフェリーは2人ということになります。
ということはつまり、現在J1リーグの試合は1節で9試合が行われていますから、最低でも18人のVAR専門レフェリーが必要になるわけです。
最低でも18人ですから、実際にはもっと多くの人員が必要になるでしょうし、J2・J3でも導入されるということになれば、これよりもさらに多くの人員が必要になります。
現状ではこれだけの人員は当然確保できていませんし、おそらくはライセンス所持者の数も必要数を満たしていないはずです。
今後の本格導入に向けて、この人員確保という点が最大のハードルになることは想像に難くありません。
まとめ
世界の主要リーグではここ数年次々にVARが導入されています。
またリーグ戦以外でも、CLやワールドカップといった国際大会での導入も行われています。
日本では今年の1月にJリーグでの試験的なVAR導入が発表されました。
今後は日本でも本格導入に向けた動きが加速するものと思われます。