最高時速300km/h越えの世界最高峰のモータースポーツF1!
そんな速いF1マシンだから、さぞかし大きくて馬力の有るエンジンを積んでいるのだろう!なんてイメージしてしまいますよね?
しかし現代のF1は驚くほどコンパクトなエンジンで走っているのです。
F1マシンの心臓部であるエンジンにスポット当ててみたいと思います。
そもそも排気量ってなに?どこの部分をさすの?
「この車は1500cc」や「2リッターエンジン搭載」などの言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
しかし、それがエンジンのどの部分を指すかをご存知ですか?
この排気量というのはエンジン内部のガソリンと空気を混ぜて爆発させる燃焼室と呼ばれる円筒状の部分の容積を指します。
エンジンの基本としてこの円筒状の燃焼室が何個あるのかとその大きさで排気量が決まります。
また、その円筒状の部分1つを「1気筒」と呼び、その各気筒の並び方でエンジンの形式が決まります。
つまり「直列4気筒1500ccエンジン」となると4つの気筒の合計容積が1500ccで燃焼室が横に1直線並んでいるエンジンということになります。
ちなみに軽自動車は660cc、コンパクトカーで1000cc~1500ccくらいの排気量です。
F1のエンジンは何cc??
それではF1マシンのエンジンはどのくらいでしょうか?
「300km/h以上出るんだから10000ccとかあるのかな??」
なんて思う方もいるかも知れません。
しかし、2019年のルールではなんと1600cc以下のエンジンと決められているのです!
1600ccというとスズキのスイフトなどが同じくらいの排気量です。
「え!?コンパクトカーと同じ位の大きさのエンジンなの?」と思った方もいるかも知れません。
しかしレース用に開発されたエンジンは排気量こそコンパクトカー並みなれど、まったくの別物。
純レース用のF1エンジンは600馬力以上のパワーを生み出します。
これは同じ排気量の市販車の4倍近くのパワーです。
更に現行のF1はハイブリット仕様なのでモーターのパワーも追加されて、場合によっては瞬間的に800~1000馬力近くのパワーで走行していると言われます。
もっと過激な時代もあった?F1排気量の歴史
現在のF1マシンは1600ccのエンジンにターボをつけて700馬力。
市販されている乗用車に比べればとんでもないモンスターマシンです。
しかし、過去のF1にはもっと過激な時期がありました。
1970年代後半にF1の世界にターボが登場し、いっせいにターボ化の波が来ました。
その中でホンダが1987年に投入したエンジンは現在のF1より排気量の小さい1500ccのエンジンでしたが、ターボを装着してなんと最大1500馬力を発生したのです。
単純に現在のF1より100cc少ない排気量なのに馬力は倍以上!
まさにモンスターマシンです。
1989年にターボがルールで禁止されてからは3500ccV型12気筒エンジンなどのターボは無いけれども大排気量で走るF1マシンが登場しました。
そして時代と共に3000cc→2400ccと排気量が小さくなっていきます。
そして2009年にハイブリットシステムであるKERSが登場しF1ハイブリッド時代に突入します。
2014年からは再びターボ使用可能ルールとなり現在の1600ccターボにハイブリッドシステムのマシンとなりました。
しかし、馬力が減り排気量が減りとなったF1マシンが遅くなったのかというと真逆で、年々コースの最速タイムが塗り替えられるほど速くなっています。
これはエンジン以外の技術の進化で1周の平均速度が上がったためで、馬力が沢山あれば速く走れるわけではないというモータースポーツの奥深さを数字として見れる非常に面白い結果となっています。
どうしてコンパクトカー位の大きさのエンジンで600馬力以上出るの?
F1マシンが600馬力を叩きだすのに比べ、同じ1600ccターボエンジンのスズキ・スイフトは140馬力程度です。
なぜこのような違いが生まれるのか。それはエンジンの耐久性に秘密があります。
2019年のF1のルールでは1年間で3基のエンジンまで使用可能とあります。
言い換えれば4ヶ月に1個ペースでエンジンを使い捨てにするということでもあります。
つまり1個当たり5000kmほどの距離が走れれば後は壊れても構わない、その分の耐久性を犠牲にしたぶん、ギリギリの軽量化やパワーアップを施してあるのです。
市販車は10万キロ以上持つように設計されているので、そこがF1エンジンとの決定的な差でしょう。
また、回転数も市販の車では1分間に6000回転~8000回転がリミットですが、F1マシンは15000回転ほど回ると言われています。
まさにF1競技に特化したスペシャルエンジンなのです。
まとめ
F1には走る工芸品や走る実験室などの異名がつくことがあります。
その言葉通り、決められたルールの中で職人技をもつエンジニアやメカニックがぎりぎりの無駄を削り落として作る、それがF1マシンなのです。
レースを戦うのはドライバーだけではありません。
エンジニアにとっても戦いの場なのです。