その時代の最先端の技術が詰め込まれているF1マシン。
私達が乗るような車とは見た目や性能がまるで違いますね。
実は、その車を操作するハンドルも大きく違いがあるということを知っていましたか?
今回はその違いについて解説していきます。
ハンドル?ステアリング?
今どき?のF1のハンドルってこんなんなってるのね、こんなの操作しながら時速300㌔で運転なんて絶対出来んわ、 pic.twitter.com/TIznOyUX6B
— 死鯔 (ですぼら) (@bccp6e) March 10, 2019
「呼び方はハンドルが正解なの?ステアリングとも聞くけど……」という人もいるかもしれません。
これについての答えは「どちらも正解」です。
何故複数の呼び方があるのかというと、海外では日本でいうハンドルのことをステアリング、またはステアリングホイールと呼んでいるからです。
元々英語圏ではない日本は、日本人同士なら問題なく通じるけど外国人からするとニュアンスが違ったり、全く違う意味になる英語というのが多くありますが、ハンドルもその一種。
海外がメインのF1ではステアリング、ステアリングホイールと呼ぶのが一般的になっています。
また、ステアリングは全体の総称でその中にホイールが含まれているので、より明確にするのならステアリングホイールと言いますが、基本的にステアリングだけでも問題ありません。
この記事中では、わかりやすくハンドルと表記していきます。
取り外せるのは何故?
Hamilton's steering wheel pic.twitter.com/v4jAxnrBvW
— Craig Scarborough (@ScarbsTech) October 22, 2015
F1マシンのハンドルは簡単に取り外せます。
あるレースでは、調子がおかしくなったハンドルをレース中に交換することに決め、ピットインしてからなんと3秒で交換!
それほど簡単に外れるようにできています(それにしても3秒で交換は速すぎますが)。
何故取り外れるようにできているかというと、選手が乗り込むコックピットの構造によるものです。
F1マシンのコックピットは、ドライバーに棺桶と言われたこともあるほど窮屈なものになっていて、乗り降りする際にハンドルがあるとかなり無理な体制にならなければいけません。
それを防ぐために、取り外しできるようハンドルに手を加えられていきました。
市販車のハンドルとの違い
Here's a great picture from Mercedes comparing an @F1 steering wheel from one of their early fifties cars with its 2019 W10 equivalent, featuring 25 buttons and crafted from carbon fibre, fibreglass, silicon, titanium and copper. #F1 pic.twitter.com/cucOWFB8Au
— RaceFans (@racefansdotnet) March 12, 2019
F1マシンのハンドルは市販車のハンドルと比べて見たらすぐわかるように、とにかくボタンが多い!
最近の市販車にもボタンはついていますが、あんなにゴチャっとはしていませんよね。
しかも、中央にはディスプレイまでついていますし、背面にはシフトチェンジ、クラッチ操作をするためのパドルまでついているんです。
一般的な市販車ですと、シフトチェンジは横にあるレバーで、クラッチは足で操作していますが、F1はクラッチペダルもシフトレバーも撤去してより簡単に操作できるようにハンドルにつけてしまいました。
形も大きく違っていて、丸ではなく四角に近いものになっており、車のハンドルというよりはゲームのコントローラーのような印象です。
F1が始まった当初は、私達が見慣れているような丸いハンドルでボタンもなかったのですが、時が進みF1のレベルが上がるにつれ、ボタンやダイヤルがつくようになり、チームごとにDのような形にしたり飛行機の操縦桿に近い形にしたりと試行錯誤するようになりました。
素材も木やアルミから金属に、金属からカーボンファイバーにと、最適なものに変化させています。
では何故、こんなにも違いがあるのでしょうか?
それは、F1マシンのハンドルには進む方向の操作以外にもたくさんの機能がつけられているからです。
市販車のボタンは、音量の操作や選曲など運転に関係ないものやオートクルーズのオンオフなどの補助的なものだけですが、F1のハンドルにはブレーキのバランス調整やパワーユニットのモード変更、チーム無線に繋いだり、タイヤの状態にマシンを合わせたり、ピットに入る時制限速度以上にならないようにしたり、手を使えないドライバーのために飲み物を口に流し込んだり……本当に様々なボタンがあります。
この多くのボタン、シフトとクラッチ、これらを平均速度200km/hで走る中頻繁に操作しているのです。
ハンドルだけで車が買えてしまう!?
年越しはいつも通り大阪です。今年は何といっても僕が生まれ育った大阪の御堂筋にてF1マシンを走らせることが出来たのが一番のトピックでしょう。このステアリングで高級車1台は余裕で買えてしまうらしい。スイッチ多すぎてすぐには覚えられん! pic.twitter.com/xFHl5u4x6y
— Shinji Nakano/中野信治 (@shinjinakano24) December 31, 2015
これだけの機能が詰まっていると、当然安く済むはずはありませんね。
その価格ですが、なんと日本円で500万から1000万円と言われています。
あの小さなハンドル1つで新車が買えてしまうんです!
サーキットによっては、リムと呼ばれるプラスチック製の誤操作防止の部品がついていないものを使ったりもするので、1シーズンで3つから4つのハンドルを必要とします。
つまり、ハンドルだけで年間数千万円かかるんですね。
まとめ
おさらいすると、F1マシンのハンドルが取り外せる理由は素早く乗り降りできるようにするためで、形やついているボタンの数、そのボタンにつけられた機能、シフトやクラッチもハンドルから手を放さずに操作できるようにしているというのが市販車のハンドルとの違いです。
しかし、最近は市販車にもいろいろなボタンがつけられたり、シフトパドルがついていたりと全く関係がないわけではなくなっています。
そして何よりの違いは作るのにかかる費用ですね。
F1マシンのハンドルだけで市販車が丸ごと買えてしまうわけですから。
1つの部品だけで車を買えるなら、F1マシン全体だとどうなるのかも気になりますよね。
チームごとに予算が違いますし、その年によっても変わってくるのですがおよそ……14億円ほど。
1台でこのお値段なんです。
レース中にクラッシュした映像を見る目が変わってしまいますね。