「ホンダPUが……ホンダPU勢が……」など、ホンダがF1に復帰した辺りからF1用語としてよく見聞きするようになったPU。
しかし、その意味をよく知らないという人も多いのではないでしょうか?
今回はそのPUについてざっと解説していきます。
そもそも何の略語?
【TopNews】 F1カナダGPで各エンジンメーカーが改良版PU投入か: F1エンジンメーカーたちは今季の第7戦カナダGP(6月10日決勝)で改良版PU(パワーユニット)を投入する計画をしているようだ。… https://t.co/wsVdmZ3ita pic.twitter.com/PVhY6PEA84
— レッドブル・ホンダ NEWS (@F1JP_News) May 22, 2018
「PU」とはパワーユニットの略称です。
「Power Unit」の頭文字をとって「PU」と呼ばれているんですね。
これはF1マシンを動かすために必要不可欠なもので、レース成績にも大きく影響するので供給メーカーは非常に力を入れて作っています。
私達が普段乗ったり道路で走っているのを見る乗用車でいうと、エンジンのことなんです。
要するに、F1マシンを動かすための部品です。
エンジンとは違うの?
PU (パワーユニット)
今のF1はハイブリットカーなので、エンジンではなくPUと呼びます。ICE、MGU-H、MGU-Kから構成されて……いるけどややこしいので、大体”ハイブリッドのエンジン”でOK!#F1用語をカンタンに説明する pic.twitter.com/p07saZOzND
— Tadashi Iida (@iidasyashin) June 6, 2018
じゃあF1マシンにはパワーユニットがあるからエンジンはないの?
そういう疑問が生まれるかもしれませんが、F1マシンにももちろんエンジンはあります。
というのも、実はパワーユニットはエンジンをはじめとした様々な部品が集まって出来ているハイブリッドシステムのことなんです。
なので、パワーユニットのことをエンジンと呼んでも問題なく通じますし、現にそう呼んでいる人も大勢いますし、各メディアでも「新エンジン」や「エンジンメーカー」と表記しますし、わかりやすく伝えるためにあえてエンジンと呼ぶこともあります。
何故PUと呼ばれるようになったのか
さくら市でホンダF1(@HondaRacingF1)のパワーユニットの特別展示を観てきました。NA時代のエンジンに比べて相当巨大で、構造物として実に美しい。3機並んでると3年目からのコンセプトの違いが一目瞭然。マクラーレンには酷く言われてましたが、実機を観ると製作者達の矜持がしっかりと感じられました。 pic.twitter.com/z9QSW9R5J1
— cheb (@cheb__cheb) September 12, 2018
2013年まではF1マシンも乗用車のようにエンジンのみで、供給するメーカーもエンジンサプライヤーと呼ばれていました。
ホンダも以前はエンジンサプライヤーとして参加している時期があったのですが、今はパワーユニットのサプライヤーと呼ばれています。
ではなぜエンジンからパワーユニットになったのでしょうか?
それについて解説していきましょう。
エンジンを動かすために使う石油などの化石燃料が、このままではなくなってしまう可能性があるという話を学校の授業などで聞いたことがあるのではないでしょうか。
そして、エンジンの使用に伴う排気ガスによる環境問題も騒がれていますね。
それにより、世界的に従来の車よりも排気ガスが少なくすむハイブリッドカーなどのエコカー、排気ガスを全く出さない電気自動車の製造に力が入れられ、その流れがF1にも及び2014年にレギュレーションが変更され、エンジン以外にERS(エネルギー回生システム)という排気ガスの熱やブレーキの際に生まれるエネルギーを電気エネルギーに変えるシステムを組み合わせたパワーユニットが導入されたのです。
この技術は、研究を重ねれば私達が乗る市販の車にも転用できるかもしれないと期待されていて、そういう意味では日本の会社であるホンダがその技術を高めているというのは国産車のクオリティアップに繋がるので楽しみですね。
作っているのは実は4メーカーだけ
FerrariとメルセデスのPU比較。Ferrariはセンサーがゴチャゴチャしてるけどそれは置いといて、エキゾーストマニホールドの設計思想の違いが面白い。Ferrariは上へ上げるのを嫌って横方向に広げながら巻いて、メルセデスは横方向に広げるのを嫌って上方向に巻いてる。重心か空力か、面白いですね。 pic.twitter.com/5HaEgpfQI3
— 悠々 (@Yuyujiteki_Si) May 10, 2019
F1には現在10チームが参加していて、各チーム2人のドライバーがいるので合計20のF1マシンが毎レース走っています。
この10チームへパワーユニットを供給しているのはホンダ、メルセデス、フェラーリ、ルノーの4つのメーカーだけなんです。
どれも名前を一度は聞いたことのある世界的な自動車メーカーですね。
このうちホンダ以外の3メーカーはパワーユニットだけでなくマシンの方も自分達で作っているいわゆる「フルコンストラクター」で、ホンダは唯一のパワーユニットだけでの参加メーカーというわけです。
ホンダとルノーが2チームに、メルセデスとフェラーリが3チームにパワーユニットを供給しています。
パワーユニットに変わる前、2013年まではコスワースというレース用のエンジンを専門的に作っている会社がエンジンを供給していたのですが、あまり結果がでないところにレギュレーションの大幅な変更という追い打ちがありF1撤退を余儀なくされてしまいました。
その後、ホンダがサプライヤーとして参戦しますが、他のメーカーが参戦できる気配はありません。それほどパワーユニットを作るのは、金銭的、技術的に難しいのです。
そのため、すでにパワーユニットを作る技術を持っている各メーカーは新しく作りたいというメーカーに対して、技術共有をするように義務付けるレギュレーションの導入も検討されています。
そうでもしないと、新規参入は望めないわけですね。
まとめ
おさらいすると、PUとはパワーユニットの略で、パワーユニットとはF1マシンの心臓ともいえる重要な部分のこと。
エンジンよりも環境に配慮しつつ、なおかつエンジンよりもハイパワーな動力です。
その分、作るにはお金も技術も必要で、まだ新しいレギュレーションということで実際にF1で使用されたパワーユニットを作ったのは4メーカーだけで、戦えるレベルに仕上げる技術もこの4メーカーしか持っていないと思われます。
その4メーカーの中の1つのホンダは、参入してすぐのパワーユニットを全く使えないと、ドライバーやコンストラクターに言われてしまうなど苦戦していましたが、ここ1,2年で驚くほど成長し安定してポイントを取るだけでなく、優勝や表彰台に立つ回数も増えてきました。これからが楽しみですね。
PU(パワーユニット)は、F1以外の場所ではほとんど聞かない単語ですが、F1の中ではかなり重要なものです。
そしてどこがどのパワーユニットを使っているか調べてみると、さらに面白いと感じられると思います。
このチームとこのチームは同じパワーユニットを使っているのに何故こんなに差があるんだと考えると、そこにはマシンの性能の差があったり、優秀なエンジニアの存在があったりとどんどん他の情報も気になっていきます。
日本国内での全盛期に比べると盛り上がりに欠けると言われているF1ですが、まだまだ面白い要素があるモータースポーツです。
是非、F1を追いかけてみてください!